DWG互換CADへのリプレースで
操作性はそのままに"桁違い"のコスト削減を実現
鹿島建設株式会社様 導入事例
導入製品 | BricsCAD |
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導入前の課題 | ● 2D CADの導入に多額の初期費用が必要 ● バージョンアップの際の重いコスト負担 ● デジタル変革の原資を生み出すコスト削減の要求 |
導入後の効果 | ● DWG互換CADへの移行で初期費用を約1/8に削減 ● 2D CADの運用全体では1/10以下へのコスト削減 ● 建築設計における高い品質と生産性を維持 |
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鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)の建築設計本部は、業界標準のDWGファイル形式の図面データを扱える互換CADに注目し、既存の2D CADソフトからBricsCADへのリプレースを行ってからすでに十数年が経過した。以降、同部は建築設計における高い品質と生産性を維持しつつ、桁違いのコスト削減を実現するなど、多大な成果を上げている。この成功のポイントはどこにあったのか、同部のこれまでの取り組みを振り返っていただいた。
デジタル変革の原資を生み出すコスト削減への強い要求
わが国屈指の大手総合建設会社(スーパーゼネコン)である鹿島建設。建築、土木をはじめ開発、エンジニアリング、環境まで幅広い事業をグローバルに展開する中で、建築設計本部は高層ビルや商業施設、生産施設など、さまざまな建築物の建築設計をはじめ構造設計や設備設計などを担っている。
その業務で欠かせないのが2D CADだ。同本部 企画管理統括グループ 企画グループ グループリーダーの玉井 洋氏はこう語る。
「設計の3D化が加速しており、建築業界でも3Dモデルをベースに建築物のさまざまな属性情報を一元管理するBIM(Building Information Management)の導入が進んでいます。しかし、建築設計の実務においては今なお図面が主流です。具体的には2D CADの標準ファイル形式であるDWG形式に準拠した図面データがデファクトスタンダードとなっており、建築設計本部に所属する約700名の設計者やオペレーター、さらには設計子会社の人材にいたるまで全員がDWG形式で図面を作成しています」
こうした背景から同部では長年にわたり、DWGファイル形式の開発ベンダーが提供している既存の2D CADソフトを利用してきた。だが、そこで浮上してきたのがコストの問題である。
「初期費用はもとよりバージョンアップを行うたびに多額のコストがかかり、重い投資負担となっていました。一方で経営陣からは、BIMをはじめとするデジタル変革の原資を生み出すためのコスト削減が強く求められていました」(玉井氏)
そこで同部が決断したのが、既存の2D CADソフトと同様の操作性でDWGデータを扱うことができる互換2D CADへのリプレースである。
数あるDWG互換CADの中からBricsCADを選定したポイント
2011年当時にもDWG互換CADは数多く存在していたが、その中から同部が選定したのがBricsCADである。
「社内では非常に多くの設計者やオペレーターが既存の2D CADソフトを利用しており、操作性をできるだけ変えることなく、設計品質や生産性を維持したいという思いがありました。この要件に最も合致したのがBricsCADだったのです。また、DWG互換CADへの移行に際しても、当社の業務スタイルにあわせたカスタマイズを容易に行えることが絶対条件です。当初、既存の2D CADでは英語でのやり取りだったため少々難易度が高かったのですが、BricsCADの提供元である図研アルファテックから日本語で技術サポートを得られたことが、選定の大きな決め手となりました。当然、慣れ親しんでいた2D CADから変更したくないという意見もありましたが、導入前に徹底的に製品比較したうえで、BricsCAD導入するメリットを社内に提示したことで現場の理解を得られ、スムーズな導入につながりました」(玉井氏)
ここで言うカスタマイズとは、具体的にどのような要件を指しているのだろうか。企画管理統括グループ(情報担当) デジタルデザイン統括グループの久保 隆成氏は次のように補足する。
「当社では2D CADを使って設計するにあたり、CAD図面作成基準という社内標準を設けています。図面内で使用する線の種類や文字のフォント、各種ライブラリなどを一括して規定したものです。要するにこのCAD図面作成基準を取りまとめたテンプレートを、将来にわたって継承し続けられることが必須となります」
バージョンアップやカスタマイズを含め、運用全体で約1/10へのコスト削減
以来、十数年間にわたり同部のメインツールとして利用されてきたBricsCADは、多くの効果をもたらしている。まず注目すべきはコスト削減だ。
「単純に比較することは困難ですが、仮に今日まで従前の2D CADソフトを続けてきたケースを想定すると、コストは桁違いに増大していた可能性があります。BricsCADに移行することによって、導入費用を約1/8に抑え、バージョンアップやカスタマイズを含めた運用全体では1/10以下へのコスト削減を実現できたと考えています」(玉井氏)
もちろんBricsCADに移行したあとも、建築設計における高い品質と生産性を維持している。この成功を成し遂げた背景には、大きく2つのポイントがある。
「1点目は、CAD図面作成基準をまとめたテンプレートの実装です。本来は汎用的なCADであるBricsCADに対して、当社業務に特化したカスタマイズと環境整備を行うことで組織に定着化を図ることができました。2点目は、サポートインストラクターという社内ヘルプデスク体制の確立です。BricsCADを使って図面を作成する中で寄せられるさまざまな問い合わせに、一元的な窓口となって回答したり、問題解決をサポートしたりするものです。これまでのQ&A対応の履歴を通じて、すでに多くのノウハウとナレッジを蓄積しており、サポートレベルを高めています。また、サポートインストラクターで回答しきれない問い合わせについては、図研アルファテックにエスカレーションする体制となっており、心強い存在となっています」(久保氏)
もっともすべてが順風満帆だったわけではない。十数年にわたってBricsCADを運用する中では、さまざまな苦労があった。
「以前、古い図面の不正データが原因で問題が発生したことがありました。しかし、そんな窮地でも図研アルファテックは開発元のBricsys社と連携し、問題解決をリードしてくれました。こうした図研アルファテックの技術力やサポートに対する信頼も、私たちがBricsCADを使い続けている大きな理由となっています」(玉井氏)
BricsCADと3Dモデルのシナジーを最大限に発揮
今後に向けても同部は、BricsCADの活用レベルをさらに高めていく意向にある。その意味でも求められるのがサポートインストラクターの強化だ。
「BricsCADによる図面(DWGデータ)を共有している部門は、建築設計本部だけにとどまらず、施工部門をはじめ、各支店の営業部門や関係会社、協力会社まで広がっています。そうした幅広い関係者から寄せられる問い合わせに、組織横断で統一的に対応できるサポート体制を実現したいと思います」(久保氏)
さらに全社にスコープを広げると、鹿島建設は「次の100年を『スマート』で」というDXの将来ビジョンのもと、「作業の半分はロボットと」「管理の半分は遠隔で」「全てのプロセスをデジタルに」という3つのコアコンセプトを策定。先端ICTや各種ロボットの活用を加速し、現場管理手法の革新を図り、生産性を向上することで、より魅力的な建築生産プロセスを確立していくことを目指している。
「今後も図面は建築設計の基礎であり続けると思いますが、一方でこのスマート化戦略の根幹に位置するBIM推進の一端を担っていくことも、建築設計本部の重要なミッションです」と玉井氏は語っており、BricsCADと3Dモデルのシナジーを最大限に発揮させる建築設計のあり方を追求していく構えだ。
鹿島建設様 概要
会社名 | 鹿島建設株式会社 |
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設立 | 1930年 |
資本金 | 814億円余 |
従業員数 | 8,219名 (2024年3月末) |
事業内容 | 総合建設会社(スーパーゼネコン) |
※ご担当者様の所属部署、インタビュー記事内容などは取材当時のものです。
(2024年10月掲載)